ルーチェからパンダ、デルタまで!ジウジアーロが残した傑作たち
ジョルジェット・ジウジアーロとは?その人生と哲学
トヨタ博物館 クラシックカー・フェスティバル:FIAT PANDA
デザインの巨匠、ジウジアーロの生い立ち
CG NEO CLASSIC vol.10 Giorgetto.Giugiaro
ジョルジェット・ジウジアーロは、1938年8月7日にイタリアのガレッシオ村で生まれました。彼の家族は芸術的な背景を持ち、とりわけ祖父や父親も画家として活動していました。この環境が、ジウジアーロにとって創造性を育む土壌となりました。学生時代、彼は美術を学び画家を目指しますが、17歳でイタリアの自動車メーカー、フィアットのデザイン部門「チェントロ・スティーレ」に入社します。この経験が、彼のカーデザイナーとしてのキャリアの基盤を築くことになります。
イタルデザイン創設者としての活躍
ジウジアーロは、1959年にカロッツェリア・ベルトーネに移籍し、ここでアルファロメオ「ジュリア・スプリントGT」などを手掛けることで彼の才能が広く認められるようになりました。
MASERATI GHIBLI SS
その後、カロッツェリア・ギアのチーフデザイナー職を経て、1968年に「イタルデザイン」を設立します。この会社は、自動車デザインのみに留まらず、家具や電子機器など幅広い工業デザインを手掛ける新時代のデザイン会社となりました。イタルデザインは、その革新性と実用的な発想で自動車業界に多大な影響を与え、ジウジアーロは時代を象徴するデザイナーとしての地位を確立しました。
FIAT GRANDE PUNTO
カーデザイン界におけるジウジアーロの影響
ジウジアーロがデザインした車は、フォルクスワーゲン・ゴルフやランチア・デルタなど、多くが各国の市場で成功を収めました。これらの車は「破綻しない」デザインとして評価され、商業的な成功だけでなく、モータースポーツの場でも頂点を極めます。
また、いすゞ「117クーペ」やマツダ「ルーチェ」、フィアット「パンダ」など、彼の手掛けた車には実用性と美しさが見事に融合しています。こうした実績により、ジウジアーロは1999年に「カー・デザイナー・オブ・ザ・センチュリー」の称号を獲得し、現代自動車デザイン界における方向性を大きく左右しました。
パワステがまごおり:いすず117クーペ
「折り紙細工」と呼ばれるデザインへの評価
Gulfノスタルジックカー大行列:スバル アルシオーネ
ジウジアーロのデザインは、「折り紙細工」という言葉で語られるように、直線的でシャープなラインを特徴とします。このスタイルは、単なる見た目の美しさだけでなく、空力性能や製造の効率化も考慮されています。例えば、1970年代に彼が提唱した「folded paper」デザインは、当時としては画期的で、現在でもモダンな印象を与えるものとして評価されています。また、このデザイン哲学はコストパフォーマンスが重要視される量産車においても大きな成功を収め、彼の作品が幅広い層に愛される理由となっています。
時代を創った輸入車:代表的な作品とその特徴
フォルクスワーゲン・ゴルフ:量産車の傑作
Gulfノスタルジックカー大行列:VOLKS WAGEN GOLF Ⅰ
ジョルジェット・ジウジアーロがデザインを手掛けたフォルクスワーゲン・ゴルフは、シンプルで実用性に優れたエポックメイキングな車です。1974年に初代モデルが登場し、その後も世界中で高い評価を受け続けています。ジウジアーロは「折り紙細工」とも称されるシャープで直線的なデザイン手法をゴルフに採用し、それによりシンプルながらも視覚的な美を実現しました。特に、使いやすいハッチバック構造は大成功を収め、量産車の基準を塗り替えたと言えるでしょう。そのデザインは実用性と美しさのバランスが取れており、破綻しない整然としたフォルムが特徴です。このゴルフは、ジウジアーロがいかに量産車のデザインに革新をもたらしたかを象徴するモデルとなっています。
フィアット・パンダ:シンプルさと機能美の融合
パワステがまごおり:FIAT PANDA
1980年に初代モデルが登場したフィアット・パンダも、ジウジアーロが手掛けた名作のひとつです。この車は、シンプルさと機能美を追求するという哲学に基づいた設計が特徴です。コンパクトなボディながらも、広い室内空間と高い実用性を実現しており、多くのユーザーに支持されました。「デザインとは課題に対する答えである」と語るジウジアーロの哲学が体現された一台であり、合理的で無駄のないデザインはユーザーに親しみやすさを与えています。また、コストパフォーマンスにも優れ、シンプルな外観ながらもイタルデザインの技術力を存分に活かしたモデルとして、多くの人々から愛される存在となりました。
国産車を進化させたジウジアーロの魔法
いすゞ・ピアッツァ:斬新なデザインへの挑戦
いすゞ・ピアッツァは、ジョルジェット・ジウジアーロによって生み出された、未来的で大胆なデザインを特徴とするモデルです。この車は、日本国内におけるカーデザインの概念を変えるきっかけともなりました。直線的でシャープな造形美は、ジウジアーロの「折り紙細工」というデザイン哲学を見事に実現しており、その先進性は当時多くの注目を集めました。また、インテリアデザインにも彼の工業デザイン的アプローチが反映され、操作性とスタイルの両立を実現しました。このモデルは、個性を重視したい購買層に響き、いすゞが持つ可能性を新たに世に示したと言えるでしょう。
スズキ フロンテ
マツダ・ルーチェ:高級感とシャープさの両立
MAZDA FAN FESTA:マツダ ルーチェロータリークーペ
マツダのフラッグシップモデルであるルーチェは、ジウジアーロの手により、洗練された高級感と機能美を兼ね備えたデザインへと進化しました。この車は、同時代の大型セダンとは一線を画したシャープなボディラインを特徴とし、日本特有の高級車市場に新風を吹き込みました。車両全体がシンプルかつエレガントなラインで構成され、そのデザインは20世紀後半のカーデザインの名作の一つと称されます。ジウジアーロの緻密なレイアウトと、無駄のない美しさが融合して、高級感だけでなく機能性へのこだわりも表現されている点が特徴です。マツダ・ルーチェはまさに、ジウジアーロが持つデザインセンスとエンジニアリング思想の賜物と言えるでしょう。
昨年に続き今年もロードスターブロスとのコラボで出展予定です
2025年はNDとNAを展示予定。アイエルモータースポーツ純正置換パーツも持ち込みますよ。
「破綻しないバランス」
また、ジウジアーロの作風には「破綻しないバランス」というキーワードがよく使われます。これは、車体のあらゆる部分が計算されつくされたデザインでありながら、自然と人々を惹きつける調和を持っているという意味です。このバランス感覚は、彼が手掛けたオープンカーにおいても一貫しており、まさに「走る芸術」と呼ぶにふさわしい仕上がりを実現しています。
モジュール型デザインの可能性
ジウジアーロは、モジュール型デザインという革新的な考え方も提唱しました。このアプローチは、複数のパーツを組み合わせることで、多様なバリエーションの車を効率良く製造するというものです。この考えは、特に量産車における大衆モデルのデザインにおいて非常に効果的です。
例えば、彼が手掛けたフォルクスワーゲン・ゴルフやフィアット・ウノといったモデルには、モジュール型デザインのコンセプトが見て取れます。これにより、生産コストを抑えつつ、複数の市場ニーズに応えることが可能になりました。この柔軟なデザイン手法は、ジウジアーロの「目的志向」という設計哲学を具現化したものであり、現代の車両設計にも大きな影響を与えました。
機能美を追求した車両設計
トヨタ博物館 クラシックカー・フェスティバル:BMW M1
ジウジアーロのデザインで忘れてはならないのが、「機能美」という重要な要素です。彼は常に美しさと実用性を両立させることを追求しており、デザインがただ見た目のためだけに存在しているわけではないことを強調していました。この哲学は、スポーツカーから量産車、高級サルーンに至るまで、あらゆる車両設計に貫かれています。
彼が手掛けた車の多くには、人間工学に基づいた設計理念が反映されており、操作性や快適性が最大限考慮されています。また、軽量で耐久性のある素材の選定や空力特性の向上など、技術的な面でも革新的なアイデアが盛り込まれており、これが「破綻しないデザイン」として多くの支持を得ています。
このように、ジョルジェット・ジウジアーロのデザインは、単なる芸術作品にとどまらず、実際に使用されることを前提とした「機能と美の調和」を追求するものでした。彼の哲学と技術が詰まった作品は、現代のカーデザインにおいても色褪せることなく輝きを放っています。
「見る、分析する、貯める」という設計哲学
ジウジアーロが掲げた設計哲学、「見る、分析する、貯める」は、彼のデザインスタイルを理解する上で欠かせません。彼は美しいデザインを単なる表面的な美しさとして捉えず、常にその背後にある目的や使用環境を深く見つめました。そして、それらを分析し、本質を捉えた上でアイデアを蓄積する。このプロセスの繰り返しが、彼のデザインを永続的で普遍的なものへと導いたのです。
こうした哲学は、日産初代マーチやマツダ・ルーチェといった国産車にも色濃く反映されています。破綻しない構造や機能性、高級感といった特長が後世におけるデザインの模範となると同時に、その実用性は現代の車両設計における大きな指針ともなっています。この設計哲学が、彼を「カーデザイナー・オブ・ザ・センチュリー」にまで押し上げた一因であることは間違いありません。
ジウジアーロ作品の進化と普遍性
COPPA CENTRO GIAPPONE : ASA1000GT
ジウジアーロが手掛けたデザインの素晴らしさは、過去の作品が今なお色あせることがない点にも現れています。ランチア・デルタやフォルクスワーゲン・ゴルフ、いすゞ・ピアッツァなど、彼がデザインした数々の車両は、時代に左右されない普遍的な価値を持っています。それは、明確な目的志向と順応性、そして時代を超えた汎用性を追求し続けた結果だと言えます。
ジウジアーロが生み出すデザインは、技術の進化と共に進化しつつも、その美学と機能性の核が揺らぐことは決してありません。そのため、彼が残した作品や哲学は、現代の自動車デザインにおいても常に参照される存在となっています。このように彼のデザインは単なるスタイルの提供ではなく、それ自体が未来を見据えた思想として、後世にわたって受け継がれていくのです。
そのジウジアーロ作品に出合えるイベント「COPPA CENTRO GIAPPONE 2025」
